5 chapters·Completed
明治の世、国家の期待を一身に背負い、若きエリート官吏・太田豊太郎は、ドイツのベルリンへと留学する。法律と政治を学び、立身出世の道をひたすら歩んできた彼は、自由な異国の空気のなかで、はじめて自分自身の心と向き合う。そんなある日、彼は教会のかたわらで涙する、貧しくも美しい踊り子エリスと出会う。二人は静かに心を寄せ合い、つかのまの幸福な日々を過ごす。だが、それは祖国と立身出世を捨てることを意味していた。やがて、かつての友からもたらされる帰国の誘いと、エリスへの愛——豊太郎は、出世か愛か、義務か心か、引き裂かれる選択の前に立たされる。エリート青年の良心と弱さ、愛と裏切り、そして取り返しのつかない後悔。近代日本人の「個」の目覚めを描いた、日本浪漫主義文学の記念碑的名作。
太田豊太郎は、若くしてその才を認められた、国家の期待の星だった。 明治の世、近代化を急ぐ日本は、優秀な若者を、こぞって西洋へと送り出していた。豊太郎もまた、そのひとりだった。幼いころから神童とうたわれ、官立の学校を、つねに首席で卒業してきた彼は、ある省の役人として、法律と政治を学ぶために、はるばるドイツのベルリンへと留学することになったのである。…
Full chapters are read in the Arwy app.
Arwy · read · write · meet